ACES は概念だけ理解しても「で、どう使うの?」となりがちです。
ここでは実際の制作現場で使われている
“Maya(CG)→ After Effects(合成)→ Unreal Engine(リアルタイム)→ DaVinci(最終グレード)”
の一連のワークフローを、例とポイント付きでまとめます。
Step 1:撮影素材(実写)を ACES に取り込む
▼ ① 撮影形式のオススメ
- RAW(最強)
- Log(S-Log3 / V-Log / LogC / etc)
理由:
ACES では IDT(Input Device Transform)で正しく線形化できるため
素材の“光の情報”を最大限活かせる。
▼ ② IDTを使って ACES世界に入れる
例:
- Sony SLog3 → IDT.Sony.SLog3_SGamut3
- ARRI LogC → IDT.ARRI.LogC3
- Panasonic VLog → IDT.Panasonic.VLog
Logの癖(曲線・色味・センサー特性)を取り除き、
“これが本来の光”という状態に戻す。
Step 2:Maya / CG を ACEScg で制作する
▼ ① 作業色空間は ACEScg(Linear)
- 物理ベースレンダーと相性最強
- 広色域で、光の計算が破綻しにくい
- Arnold / Redshift / V-Ray すべて推奨
▼ ② テクスチャの読み込み
例:
- BaseColor → sRGB
- Roughness / Metalness → Raw
- Normal → Raw
- HDRI → Raw
- Light textures → sRGB
読み込み時に
OCIOのInput Color Space を使って
自動的に ACEScg に変換される。
▼ ③ CG を EXR(ACEScg)で書き出し
- 16bit half
- ACEScg
- マルチレイヤー推奨
これが合成ソフトへ渡す“正しいCGデータ”。
Step 3:After Effects(2025以降)で ACES合成
2025から AE が OCIO をネイティブ統合したため、
Maya の CG と実写素材をそのまま ACESで扱える ようになった。
▼ ① プロジェクト設定
- Color Engine:OCIO color managed
- OCIO Config:ACES 1.3
- Working Space:ACEScg
▼ ② 素材ごとのInput Color Space設定
- CG(ACEScg EXR)→ ACEScg
- 実写(LogC / SLog3)→ IDTで指定
- 709のグラフィックス → Rec709
▼ ③ コンポジット処理
ここで注意:
- AEの古いエフェクトは色空間を無視する
- UIの色(赤など)は当てにならない
- Adjustment Layer によるグレーディングは ODT を通る前提で
ただし2025以降は
色一致の精度が大幅向上したため、
Maya / Nuke とほぼ同じ色が出る。
▼ ④ AEでのプレビューは ODT の Rec709
作業中はここで最終の色を想像できる。
Step 4:Unreal Engine で ACES トーンマップ表示
UE5 は 標準で ACESトーンマッピング が入っている。
ただし注意点:
- UE の ACES は簡易版(RRT + ODT が簡略化)
- 正式ACESと 100% 一致ではない
- 赤飽和やハイライトロールオフがやや強い
- ノンカラーのアルベド値は必ず正しく設定する
▼ 色合わせの実例
Maya と UE を一致させるには:
- Maya で ACEScg → ODT Rec709 の見え方を確認
- UE の Viewport → “ACES” のまま
- “Exposure Compensation”を 0 にする
- PostProcess Volume は余計な効果を切る
これで 95% は一致する。
Step 5:DaVinci Resolve で ACES最終グレーディング
最終仕上げは Resolve か Baselight が主流。
▼ ① Resolve 設定
- Color Management:ACES 1.3
- Timeline:ACEScct
- Input:素材ごとに IDT
- Output:ODT Rec709 / HDR / P3D65
▼ ② 最終レンダリング例
- ACES → Rec709
- ACES → HDR(Dolby Vision / HDR10)
- ACES → P3 シアター
- ACES → Web用 709
どこへ出すかは最後に変えるだけでOK。
実例ワークフローまとめ
[撮影素材(Log/RAW)]
↓ IDT(カメラごとの補正)
[ACES2065-1 線形世界]
↓ 色管理
[CG(ACEScg)] ← Maya
↓ EXR
[AE(OCIO + ACES)] ← 合成
↓ コンポジット
[UE5(ACESトーンマップ)] ← リアルタイム確認
↓
[Resolve(ACES)] ← 最終色調整
↓ ODT
[Rec709 / HDR / P3 / Web]
この記事のポイント
- Maya → AE → UE → Resolve の色を 一貫して一致 させる
- AE 2025以降は “ACES 合成が普通に可能”
- UE は ACES風だけど一致させやすい
- 最後に出力形式だけ変えれば、
709 / HDR / P3 に ワンタッチで変換 できる - データそのものは「光の正しい情報」で保持される

